第2話「障がいを持った方への選挙公報」

この何も書かれていないように見える冊子は、一昨年の「県議会議員選挙」において発行された視覚障がい者向けの点字の選挙公報です。視覚障がい者の方にとっては大切な情報が、点字により書き込まれていますが、「市議会議員選挙」においては同様の物の準備がありません。

私が議員になってから、視覚障がいを持った方と知り合う機会がありました。その方は、「あなたには申し訳ないが、市議会議員の選挙には行っていない」と言うのです。なぜならば市議選では、点字の選挙公報がなく、たまたま近くを通りかかった選挙街宣車の名前の連呼を聞く以外は、どのような市会議員が立候補し、何を訴えているかが全く分からないという理由からでした。

本来、市長や市議会議員は、行政サービスに最も近い議員であり、市民にとって身近な存在でなければいけません。視覚障がいを持った方にとって、この大切な選挙への正式な案内が無いことは人権の無視ではないかと私は考えます。

「なぜ点字を含む、視覚障がい者の方向けの選挙公報が出されていないのか?」
私は、平成29年9月定例議会においてこの問題を取り上げました。

「平成23年に総務省より、点字及び音声による選挙情報の提供について、市町村選管には措置を講ずることが望ましいとの文書が発信されています。果たして富山市選管ではこの問題に対する議論がなされたのでしょうか。」

私の質問に対し、「市議選のスケジュールや候補者数が多いことなどから、困難と考えていた」との返答がありました。しかし、これは単なる言い訳に過ぎません。なぜなら隣の金沢市では、市長・市議選とも点字、音声、拡大文字で作成し配布されているのです。

日本における視覚障がい者の人数は約34万人。また聴覚障がい者の人数も、視覚障がい者とほぼ同じです。この年、富山県において手話条例が制定されていますが、行政は困っている人に、配慮すること自体が大切であり、心のこもらない条例や法律など無意味です。3か月後に行われる「市議会議員選挙」でも障がいを持った方を無視しない選挙公報が行われるべきだと私は考えます。